90話「一つの事だよ」
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帰国子女とシャトランで千夏先輩のチケット争奪戦をすることになった大喜。外野も集まり、「そんなにチケットほしいかねえ」などと言う人も。
「この勝負に敗けたら、ナツを諦めるってのはどう?」
「そんなの乗るわけないでしょ!こんなことで諦めるような、想いじゃないんですよ!」
そんな会話を繰り広げながら、競う二人。
一方当の千夏先輩は、ユメカと対面中。
「ここでバイトしてるの?じゃあ大喜君も知って…」
「他の高校行ったのって、ご両親のことがあったから?」
「関係ないよ。」
「私はそう言う事話してほしかった。だけど友達だからって全部話してとはいえないし、夢佳の人生だもん。…しかたないよね。」
「邪魔してゴメン」
そういって去ろうとする千夏先輩。
「言えるわけないじゃん!自分の弱いところ―特にナツには!私はあんたの、あこがれの存在だったから!」
「もちろん友達として、楽しい時もたくさんあった。バスケのうまい同級生って、頼ってくれて慕ってくれて。だけどだんだんバスケへの熱が冷めていって、バスケから逃げてくなって…だから私には、むしろナツがあこがれだった。」
「対照的な自分がはずかしくなって、嫌いになっていった。」
「私見てたんだよね。中学最後の試合の翌日、ナツが一人で練習してるの。」
それは、大喜が観たのと同じ光景。
「私はその頃調子落としてて、終わったことに解放感すら感じてたのに。だからこそショックだったんだよ。ナツが男子と二人で遊んでたの。バスケに夢中で、他の事には見向きもしないで、そういう人だから―」
「違うよ」
そこで千夏先輩が、遮ります。
「他の事じゃない。私にとってはひとつのことだよ。夢佳が辞めて、身近な目標も、頼れる存在もいなくなって、寂しかった、全国制覇は遠い目標で、この地道な練習は本当にためになるのか、わからなくなる時、挫けそうなとき、力を貰える。」
「そういう人がいるから、頑張れることもある」
はっきりと、そういう千夏先輩でした。
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