恩田陸 「木洩れ日に泳ぐ魚」を初めて読んでほかの人とめちゃくちゃ解釈がずれてしまった話

小説

先日恩田陸さんの、「木洩れ日に泳ぐ魚」を読んだ。自分的にすごく面白くて、なんだこれは!と一人で感動していた。

しかしながら、ふと自分の解釈が気になってネットを漁ってみると、「あれ?僕めっちゃ誤読してるんじゃ?」と思うようになってきた。

というわけで、今回は僕が初めて木洩れ日に泳ぐ魚を読んで、一般的な解釈とどうズレがあったのか、僕なりの解釈をまとめてみたいと思う。

この記事は完全に読了者向けの記事となっております。ネタバレにご注意ください。

1 一般的な解釈

まずはここから。もちろんこれが総意というわけではないだろうが、普通に読んでいて皆がたどり着いた結論。

ヒロとアキは生き別れの兄弟。しかし再開し、互いに家族として惹かれ、同居する。しかしお互い、恋愛感情を抱いてしまう。

実際は、二人はきょうだいではなくいとこだった。

とある旅先で二人の(実際はヒロの)父親と出会うが、その父親は死んでしまう。

二人はお互いをきょうだいだと思い込み、そのうえでお互いを愛してしまうがその禁断の恋に耐えられず別離を決意。

最後の一夜で二人は、父親が死んだ真相について語り合う。お互いが、相手が殺したと思い込んでいた。

その過程でお互いがいとこである事実を知る。

さらに、最終的にアキは、ヒロの父親が死んだ真相にたどり着いたと思われる。

別離を決意し、お互い別れてエンド。

と、読む人が多いようだった。っていうか、初見で自分がこう読まなかったことに、僕は後からとても衝撃を受けた。その理由はいくつかあるのかもしれないが、素直に読めばこの流れが理解できるはずだったのに…と、今でも疑問だ。

さて、では僕がどう読んだのか。

2 僕の個人的な読み方

上のパートで、基本的には違うところはないんですが、そもそもの前提の部分が、僕は違う読みをしてしまったんですよね。

僕の読みはこうです。

ヒロとアキはお互いをきょうだいと知りながら、恋に落ちた。さらには、その先にお互いがいとこであることも知ってしまった。

紆余曲折を経て、二人は気持ちに区切りをつけ別離を決め、最後の一夜を共に過ごすことにする。

その日、どちらからともなく、「仮定の話でもしない?」と言い出す。それは、「もし自分たちがいとこであることを知らなければ、どうなっていたか」というものだった。

話は続く。「きっと実の父親に会いに行っていたんじゃないか?」「実の父親はガイドをやっているって。」名前を隠して会いに行ったな。」「もしそのツアーで、父親が死んでしまったら?」「お互いがお互いを疑うんじゃないかな。」と。

「じゃあその想定で、今日の夜を過ごしてみようよ。」いいね。小道具に俺のナイフなんか持ってさ。」「まずはどんな話かな?いきなりはおかしいよね。真珠のピアスの話とか。」「じゃあそれで。」

そうして二人の夜が始まる。目くるめく寸劇を続け、さらにはお互いがいとこであることをはじめて知ったような演技まで。

そして夜が明ける。寸劇を終え、最後の夜を終え、二人は別離の寂しさを紛らわすことに成功する。互いを本当に愛していた、しかしそれは禁断の愛だった。それ故の寸劇。

お互い別離してエンド。

以上。

はい、おかしいですよね。でもこう読んでしまったんです。なんでかというと。

本文中に、「コメディ」という単語があったから。これはコメディだったと。それを読んで僕は、「すげえ、あんなに繊細な心理描写と掛け合いを描いていて、最後にそうやってひっくり返してきた!」と思ったんですね。というか、ひっくり返しを望んでいたんですよ。だからそう読んでしまったんです。

これまでのやりとりは、お互いが永遠の別れを紛らわすための寸劇であり、なんなら結末は「あんたなんかもう知るか!」とか、「一緒に死ね!」とかを願っていた。そうなれば、いっそ清々しいと。

だけど、結局そんな寸劇を演じてもお互いの想いは変わらず「愛」だった。一晩かけて、寸劇をしても、寂しさも苦しさも埋められなければ、感情や状況が変化することも無かった。

この物語は、二人の男女がお互いの境遇や思いをすべて知ったうえで、別離しなければならない日に抗うために演じた「コメディ」だった。

なんでか、そう読んでしまったんですよねー。恥ずかしながら。でも、もちろんこの読解には無理があると思います。わかってます。僕がどんでん返しを期待して読み進めたうえで起こった誤読だと。初めてこう誤読したとき、思わず「すげえ!」なんて恥も外聞もなく叫んでしまいましたが、まあそんなわけないよなあと。

でも読書には無数の可能性があることを、再認識させられた作品でした。

終わりに

というわけで、今回は恩田陸「木洩れ日に泳ぐ魚」についての感想記事でした。

それでは、また次回!

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