91話「最強の感情」
前回のお話はこちらから!
「夢佳、バスケは好きか?」
「とーぜんでしょ!」
父親とバスケをしながら、満面の笑みで応える夢佳。
「いいか、夢佳、その気持ちを大切にしろよ。好きって気持ちは、最強な感情なんだからな」
そういう、夢佳の父親。
「じゃあパパも最強だね、ママのこと大好きって―」
「そうだぞ」
しかし、ユメカは次第に自分の気持ちが変わっていくことを感じていました。
―くそっ、驕ってたわけじゃないけど、食らいつくので精いっぱいだ。小学生の天才の才能なんて、これからは通用しない…
これからうまくなればいい、ナツみたいに、たくさん練習すればいい。活躍を求められてここにいるんだ。努力して応えないと。
そう思い、毎日練習に励む日々。しかし、気持ちは少しずつ、離れていって。
―しょうがない、気持ちは変化するものだから。でも大丈夫だよね。今は練習のつらさに、引っ張られてるだけで。また力は戻ってくる。
そう信じ、また練習に励んで。千夏先輩には悟られないように、とひた隠しにして。
―ナツにはばれないようにしないとな、ナツは、バスケが好きだから。
ですが、ユメカは試合でも、思うようなプレーができないまま。中学最後の、引退試合でも。
―なんでもっと練習しなかったんだろう。なんでもっと、バスケに向き合わなかったんだろう。
なんで、なんで、なんで。
「夢佳、ちょっと話があってね」
「何、今寝てたんだけど。」
「あのね、お母さんたち、離婚することになったから。
少しずつ険悪になっていた両親。うすうす夢佳も気づいていましたが、ついにそう告げられて、家を飛び出す夢佳。
ー助けてっ、私はただあの頃みたいに、シュート決まるだけで大喜びするあの頃みたいに、ばすけをしてたかった…気づきたくないよっ…多分私もう、バスケのことを、そんなに好きじゃ…
そう思いながら駆け出して、向かった先の学校でみた、ひとり練習をする千夏先輩。その姿に、夢佳はきっと、ああ、もうだめだ、そう思ったのでしょう。
―あの時、ナツのそばに居続けたら、私はまた、バスケを好きになれたのかな…
「千夏先輩のウインターカップのチケット…夢佳さんにあげます!」
そんな夢佳の前に現れたのは、勝負に勝った大喜でした。
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